突然ですが、バラに微笑まれたことがありますか?
豪華で誇り高い印象のバラの花。
もの想いにふける遠い昔の貴婦人のように少しうつむいて
花首にさえほのかな気品が漂う。
そんなバラに魅せられ、そしてある時私は
バラに微笑まれた。

それは、とても素敵な瞬間だった。
バラの美しい瞬間をおさめたくて
カメラをいつしか手にするようになった。
色々なバラの表情に出会いたいと
カメラのファインダー越しにバラを・・というより
彼女を見つめていた。
美しい花びらに、一心に心の瞳をこらして・・・。
彼女は私を時には優しく見つめ返し、またある時ははかなげに
装い、そしてまたある時は私を挑発する。
開き始めた花びらが、光に透けてまぶしく
そしてとても美しい・・。

シャッターを押そう・・そう思ったその時である。
彼女は私に微笑んだのである。
ドキッとした・・。
一瞬、私の中で時が止まったように感じた。
そう、彼女は確かに私に微笑んだ。
その微笑みはまさしく私が憧れる貴婦人の微笑みであった。
誇り高く上品でとても優雅な・・・。
しばし言葉を失い彼女を見つめていた。
魔法にでもかけられたかのように・・。

しばらくして、はっとして我に返り再び彼女を見たが、
もう、微笑んではいなかった。
ほんの一瞬の出来事だったが、私には
とても忘れられない瞬間である。
あの微笑みはだれもがきっと恋におちるであろう
美しい微笑みだった。